![]() アトリエとガレージ ![]() アトリエより中二階 ![]() 京間 四畳半 |
|
設計・デザイン:山崎泰孝 協力:坂田基禎 設計施工:ミツワ産業株式会社+建築計画 所在地・京都市左京区銀閣寺町83-2 主要用途・併用住宅(住宅+アトリエ) 規模・地下1階 地下2階 軒高 6,850mm(地階道路面より) 最高の高さ 9,140mm(地階道路面より) 敷地面積 111.05u 建築面積 52.56u(建蔽率47.33%許容50%) 延床面積 127.90u(緩和による容積率75.88%許容80%) 地階 49.63u 1階 40.74u 2階 37.53u |
新・Yスタジオ 新建築住宅特集(2004.2月号掲載予定)―文中より 私は兵庫県の芦屋に生まれ育ち、芦屋を愛し芦屋にこだわって生きてきた。 谷崎潤一郎の『細雪』の舞台となり、前衛写真家中山岩太・ハナヤ勘兵衛、音楽家・貴志康一、前衛美術、具体美術協会等々、非常に多くの現代文化を生んできた。私はその影響を受けながら、代表作「芦屋市民センター・ルナホール」(『新建築』7006)をはじめ10を超える建築を芦屋につくってきた。そして阪神大震災後、新しい文化・芸術都市芦屋への提案(『新建築』9505「芦屋らしさの再生に向けて」)をボランティアで行い、我が家が区画整理地域になったので、一時的に京都町屋の生活体験をしたいと願って京都にやってきた。しかし芦屋は、その震災と前後約20年間の悪政が重なって、どこにもあるプレハブが並ぶ新興住宅地になってしまった。そして文化の拠点・美術館をペイしないからといって閉館することを決めるほど情けない都市になってしまった。一方京都は、さすが1000年を超える文化の蓄積が、さまざまな悪政や市民の破壊行為を越えてまだまだ生き続けている。私も高校時代を偶然京都で過ごし、妻も大学が京都なので、共に楽しむ芸術や茶道の仲間も多い。結局、晴明神社の指導もあって終の住まいを京都に構えることになった。 未完のままの引き渡し 今後の都市住宅は職住一体型の町屋形式がよいと提案してきたので、最初は何とか伝統的な京町屋に住みたいと考えた。多くの京都人に世話になりながら見て回ったが、仕事場と生活の場を一緒にしようとすると帯に短し襷に長しである。建物自体が本物(伝統素材と工法)であるから、一部を改修しようとしても、素材も技術も本物でなければならず、結局諦めることとなった。かといって新しい土地に自ら設計すると時間と建設費がかかること明白である。思案しながら新聞広告を見るうちに、われわれが学生時代に縁のあった銀閣寺に、まだ建っていない一戸建ての建売を見つけた。しかも道路に面した地階に駐車場があり、要望によりプランの変更が可能だという。建蔽率・容積率の厳しい敷地だが、その面積に入らない地階を増やすことによってアトリエも確保でき、金額の話し合いも成立してその不動産会社の設計施工で工事が始まった。 しかし工事が進むにつれ、私が経験してきた木造建築の常識とは違ったことが次々に起こった。本来が建売だから、プランと仕上げ表だけで仕事がはじまってしまう。簡単な立面や断面はあったが、ディテールは無いから、道路面との取り合い・段差、見えないコンクリート裏の防水や、漆喰塗りの下地等、全くわからない。仕事がはじまって初めて漆喰塗りとはボード下地に2〜3oの漆喰塗りが現在の常識だとわかった。他にも、バルコニーの手摺あるいは屋根裏への階段、その他細々とした仕事が我々の常識とは違ったものになっていて、追加のお金だけがどんどん膨らんだ。 そこで教え子であり京都で事務所をもつ坂田基禎君に協力してもらい、全く建具も入らぬ未完成のまま引き渡しを受けて転居してきた。それからが私の今回の新しい経験だった。そして、本当に多くのアーティストや素人職人と共に楽しく汗をかいて完成させたのである。 自らの手で 私は少し前から小川流のお煎茶を学んでおりそれを楽しんでいたので、接客の空間として京間の四畳半の部屋をつくった。そこは壁も天井もすべて襖風に和紙パネルをはめたものを用い、そこに絵を描いてその都度空間が変化するのを楽しむ。祝いやイベントのごとに空間を変えたいと考えた。ところがこれも最初の大工さんは、思わぬところに柱を立てたり、鴨居の高さが京間だというのに1,800oであったり、さまざまな問題が起こった。建具だけは簾戸を妻の友人の、上賀茂のお宅から貰うことになっていたため、1,720oに低くしてもらった。するとぐっと落ち着いた和の空間となり、赤スギの古障子も破格の値段で入手できた。京町屋のもつ伝統の合理性を改めて実感させられた。 結局、私の常識は従来の木造建築の建設方法であった。今の常識は、その建設技術はもちろん、素材とその組合せ方法すべてが驚くほどに近代化・合理化され、分業化とシステム化が進み、 従来の建設のテンポも職人さんの仕事も大きく変わってしまったのである。材料メーカーは企業規模も大きく、工務店や大工を中心とした現場の職人たちは力がないので、今や現場はすべて材料メーカーのペースで進む。大きな模型キットを買ってきて、現場ではその方法に合わせてカットしながら組み立てるのみである。結果的にしっかりしてよい建築ができるのならけっこうなのだが、残念ながらポコポコの安普請である。それが我慢できなくて、結局後半は思考錯誤しながらも、自分たちの手でつくることにしたのである。京都では町屋の改修を建設業者に依頼せず、建築を学ぶ学生やアーティストの手で直接行っている例が多くなってきた。21世紀の建設でスケルトン・インフィルが主流となってくれば、このくらいのインフィルは自分たちで直接、納得ゆくようにつくっていけるのではないかと思う。私はこれを機会に、今後は「インフィル造形集団」を結成して、建設も身体で直接つくっていきたいと考えている。 もう一つ学んだことがある。それは、今回は「終の住まい」ということで、今までかなえられなかった生活をできるだけ実現したいと思った。従来の建築計画は機能別に空間を用意しなければならないので、それを実現しようと考えると、多くの空間と費用が必要となる。そこで私の劇場技術的発想で「和室」空間のもつ「多機能性」と「演出性」を参考にすることにより、かぎられた予算と空間でも簡単な装置(劇場での舞台装置のように動く壁や床・家具・道具類)を用いることで多くの望みが同時に実現することができた。この方法は、今後かぎられた空間を豊かにかつ多様に生かす設計手法として確立していきたいと思う。 それを簡単に整理すると、次のようになる。 ・居間・キッチンは、「畳」床と「床下物入」と「掘りゴタツ」で家具をなくし広く多機能性をもたせた。 ・寝室は、更衣・タンス・妻の個室・テレビ室・化粧室・書斎となる。 ・屋根裏倉庫は、書庫・書類整理室として使用。 ・和室(坪庭のある「京間の四畳半(約3m角の広さ)」)は、最高5人位のコミュニケーションに最適空間である。建具を「障子」・「襖」・「簾戸」に替え、日常図面貼りの壁・天井全面にアーティストによる和紙パネル(襖風)をはめ替えることによって空間が大きく変わる。 ・個室は、書斎・寝室・所長コーナー・オーディオ室・折りたたみ梯子と組立家具でできているため、ときには模型づくりなどの作業室となる。 ・アトリエは、壁面本棚前の移動タピーと1500×2700の大テーブルによって一つの空間が仕事場 ・作業場・画廊・会議室・打合せ室に使える。 ・玄関アプローチは、作業土間・駐車・展示スペースとなる。の壁面によってさまざまに使える。 設計・デザイン 山崎泰孝 協力 坂田基禎 設計・施工 ミツワ産業株式会社+建築計画 追加木工事 かわな工業 玄関アプローチ工事 利長左官工業所 紅柄・柿渋・油拭 臼杵春芳 臼杵努 入江彰 山田和弘 山崎泰孝 山崎実千代 屋根瓦 八幡瓦製作所 (鬼瓦デザイン 山崎泰孝) 犬矢来 竹長商店 ガラス工事 板硝子テクノ株式会社 珪藻土 昭和科学工業株式会社 サメジマコーポレーション 古道具・簾・和室障子・襖 井川建具 玄関扉・門柱・掘り炬燵・テーブル 臼杵春芳 オープンキッチン・洗面所・アトリエ流し・テーブルトップ 横田利宏 アトリエ手すり 応本哲司 スライドタピー・はめ殺し障子など 入江彰 和室図面貼 学生:島本敦司 田頭秀基 吉田将士 堀井大継 東由布子 中川瑤子 中川暢子 その他協力者 岡幸男(照明家) 白砂伸夫(造園家) 入江彰 山田和弘 入江明美 吉津博元 完山剛 北出ゆか 影石申三 アート展示指導:本村元造 出展:新谷隆美 竹内英美里 東岳志 北口麻希子 北村裕美 九冨美香 松本典子 安田美弥 山本七瀬 構造・構法−−−−−−−−−−−−−−−−− 主体構造・構法 木造在来工法 基礎 ベタ基礎+(地下:鉄筋コンクリート造) 規模−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 地下1階 地上2階 軒高6,850mm(地階道路面より) 最高の高さ9,140mm(地階道路面より) 敷地面積 111.05m2 建築面積 52.56m2(建蔽率47.33% 許容50%) 延床面積127.90m2(緩和による容積率75.88% 許容80%) 地階 49.63m2 1階 40.74m2 2階 37.53m2 工程−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 設計期間 2002年5月〜 工事期間 2002年7月〜 敷地条件−−−−−−−−−−−−−−−−−− 第一種低層住居専用地域 道路幅員 西4m 駐車台数1台 外部仕上げ−−−−−−−−−−−−−−−−− 屋根/日本瓦(八幡瓦)葺き 外壁/モルタルくし引き仕上げ 開口部/木製及びアルミサッシュ 内部仕上げ−−−−−−−−−−−−−−−−− アトリエ 床/サクラフローリングt=15 壁/構造ベニヤ下地(一部RC)クロスペンキ仕上げ 天井/構造ベニヤ下地 クロスペンキ仕上げ 京間和室 床/畳 壁/図面貼仕上げ(最終は和紙貼パネルに作家による空間絵画制作予定) 天井/図面貼仕上げ(最終は和紙貼パネルに作家による空間絵画制作予定) キッチン 床/コルクタイル 壁/PBボードt=12下地 珪藻土塗、一部大型タイル及び珪藻土タイル貼 天井/PBボードt=12下地 珪藻土塗 居間 床/畳敷き一部地板(全面床下収納) 壁/PBボードt=12下地 珪藻土塗 天井/PBボードt=12下地 珪藻土塗 設備システム−−−−−−−−−−−−−−−− 空調 暖房方式/温水床暖房 冷暖房方式/エアコン 給湯 給湯方式/ガス給湯器 給排水 給水方式/公共上水道直結 排水方式/公共下水道直結 主な使用機器−−−−−−−−−−−−−−−− 衛生機器/INAX 厨房機器/トーヨーキッチン 生ゴミ処理機/ベルス 家具/臼杵春芳 横田利宏−−−−−−−−−−−−−−撮影/本誌写真部 |